貰ったチャリがパンクしていた話
決して誰かが悪いということを言いたいわけではないのだが、自分自身がとてもいたたまれない気持ちになったので日記をつづる。
一面に水田が広がるリアルな片田舎に飛ばされて早数か月が経った。
水田のど真ん中の一本道を通れば、カエルと思しき生き物の鳴き声が、不気味に響き渡っていて、季節を感じ取れる。これが果たして風流なのかは分からないが。
とにかく、そもそもこのように季節を感じ取っているのも、私が車を所持できないうえ、生の食パンで飢えを凌ぐ極貧生活に身を捧げているからである。
別に世間一般的な生活水準への向上は、十分望める余地があるのだが、何かよく分からない使命感を持って、いかにして出費を抑えて生きている。
すると、限りなく少ない金額でこれだけの効用を得られたと、何ともみじめな高揚感を得て生きてくのが人生への喜びになっていく。
しかし、タダより高い物はない、というのは不変の事実であり、今回のケースもその教訓から学ばずに繰り返してしまった。
引っ越しをした先輩から、必要のなくなった自転車を譲ってもらえると聞いた私はすっかり浮かれていた。自転車があるだけでも移動時間は短縮できる。
引き取る予定を合わせ、先輩の車に同乗する。そして向かいがてら、先輩は先輩らしく晩御飯もおごってくれた。ああ、なんておいしい味噌ラーメンだったんだ!
そんな満たされ方で先輩と別れ、譲り受けた自転車で帰路に着く。
慣れない道。夜道。無駄に回り道。
自転車はガタガタ揺れ、運転も非常にしづらい。
パンクしていることはもう気付いた。
運動不足の私にとって、これはとても堪えた。脚をつった。
明日の仕事と後悔に苛まれながら思う。
チャリ、パンクしてましたよって先輩に言うべきだろうか。
自転車、近くのショップで買い取ってくれるだろうか、はたまた...
世の中の悪意を突然請け負ってしまったのではないか、という気持ちを何とか払拭する。
タダに浮かれた私が悪いのである。
満腹に食べた味噌ラーメンでひどく胸やけした。